エンディングノートの役割 (北陸中日新聞 平成29年6月20日)
エンディングノートの役割
家族に思いを伝える■葬儀や相続円滑に
自分の死後、家族へ伝えたいことを書く「エンディングノート」が広まってきた。友人、知人の連絡先や不動産などの所有財産、加入する保険、墓や葬式の希望まで書く項目は幅広い。十年近くノートの普及に取り組んでいる相続手続支援センター石川(金沢市)の新喜章弘所長(四〇)に書き方や注意点を聞いた。
-何を書く?
大きくは三点。幼少期や仕事など今に至るまでの自分史。次は死後の葬儀や相続、お墓をどうするのか。生きている間の危機管理として認知症や重い病気、介護状態になったらどうしてほしいのかも。三点目は「これから」の自分。やり残していることや、したいことをまとめておくといい。
-なぜ書く?
最近は親子で同居する人が少ないため、まず相続で困る。親の銀行預金や不動産がどこにあるのかわからないという人は多い。ノートのおかげで、生き別れた子どもや仲が悪いきょうだい間でも円滑に相続できた例もある。相続以外でも葬儀の喪主や場所、お墓の管理など希望を伝えておくと残された家族はすごく助かる。
-どこで手に入る?
主に書店で販売しているし、相続の相談窓口や葬儀会社などが独自に配布している。市販のノートは千五百円程度が多く、知る限りでは六千円のケース付きで立派なノートもある。中には制度の説明や戸籍の集め方といった解説付きのものも。基本的には中身はほぼ一緒。自分にあったものを選ぶといい。
-注意点は?
調べないと書けない項目もあり、順番に書く必要はない。基本的にノートに完成はない。自分も周りの状況も変わるので、常に最新の状態に保っていくために完成はない。保管場所はさまざま。家の本棚に入れたり、仏壇に置いたり。私物引き取りで家族の手に渡るように職場の机に入れている人もいる。ただし死後すぐに見つけてもらわないと意味がない。第三者に見られないよう注意も必要だ。
-親に書いてほしいが、どう勧めたら良い?
確かに親子間でもタイミングは難しい。「早まったことを言うな」と言われるかもしれない。まず自分がノートを書いてみたらどうか。書く際には親に聞かないとわかない点も出てくる。「あの土地はどうなっているの。分からないから書いてよ」などと持ち掛けてみては。